
髪の約90%はケラチンというタンパク質で、18種類のアミノ酸から構成されるって知っていますか?
傷んだ髪はキューティクルが剥がれていて、そこから髪の成分が流れ出してしまいます。つまり、アミノ酸が不足している状態になります。
アミノ酸が足りないと、髪の内部がスカスカになって細くなったり、いろいろなダメージを受けやすく弱くなったりするので、抜け毛・白髪・パサつきなどが起こってきます。
また、アミノ酸は頭皮にも大事です。なぜなら、角質層にある天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)と呼ばれるアミノ酸類が含まれているからです。天然保湿成分は吸湿性(水分を取り入れる)と保湿性(水分を逃がさない)の働きに優れていて、肌への潤いを保ちます。
そこで、スカルプケアやダメージケア用のシャンプーを選ぶのであれば、この「アミノ酸」が配合されているシャンプーがオススメです。
そこで、髪になぜアミノ酸が必要なのか、もっと詳しく迫っていきましょう。
なぜシャンプーにアミノ酸なのか
髪の約90%はケラチンというタンパク質でできています。このケラチン(タンパク質)はアミノ酸で構成されているので、アミノ酸のバランスによってどんな髪になるかが決まります。
つまり、アミノ酸のバランスが崩れると健康で艶やかな髪にならないといえるのです。
髪は18種類のアミノ酸からできている
髪はどのような成分で作られているのでしょうか。いい資料がありましたので、ご紹介させていただきます。
下記の表は、八木原陽一 著「毛髪の科学と診断」(薬事日報社)の中で掲載されている毛髪ケラチンのアミノ酸組織表です。

日本パーマネントウェーブ液工業組合で分析された数値ですが、この数値は髪質によって変動します。たとえば、一番含有量が多いシスチンが少ない髪は細くて弱く、抜け毛・薄毛・切れ毛・うねりになる可能性が高まります。
18種類はそれぞれ働きに違いがあるので、まとめてみました。
シスチン
毛髪ケラチンのなかで一番含有量が多いアミノ酸。体内で生成できる非必須アミノ酸です。
ケラチン繊維を結びつける役割があるので、シスチンの量で髪の強度や髪密度を左右します。頭皮の老化を抑える働きもあるので、育毛にも効果があります。
また、シスチンが不足すると、髪が弱くなり抜け毛・切れ毛・うねりなどの原因になります。
グルタミン酸
非必須アミノ酸で、アラニン、アスパラギン酸、セリンなどの合成に必要です。髪の構成成分としては、シスチンの次に含有量が多い。
グルタミン酸は髪だけでなく角質層にある天然保湿成分(NMF)の中にも含まれていて、頭皮に潤いと弾力を与えてくれます。頭皮が硬くなると血行不良を起こしやすく、頭皮トラブルにもつながります。
ロイシン
体内では合成できず、体外から取り込まないといけない必須アミノ酸で、筋肉を作る元となる(BCAA※)の一つ。
タンパク質の分解を抑制や合成を促進するなど、タンパク質を構成するときにとても大事な働きをします。そのため、髪の健康状態にも影響があり、美髪や育毛効果が期待できます。
アルギニン
体内で生成されますが、体外からも取り入れないと不足しがちになってしまう準必須アミノ酸です。
血管を拡張させ栄養分を毛母細胞に届ける働きがあるので、頭皮のアンチエイジング効果を高め育毛を促します。毛髪を保護する働きもあります。
セリン
非必須アミノ酸で、角質層にある天然保湿因子NMFの成分の一つでもある。
セリンはコラーゲンよりも高い保湿作用があります。そのため、頭皮を柔らかくし、髪にも柔軟性や弾力性を与えてくれます。
スレオニン(トレオニン)
必須アミノ酸で、一番最後に発見されたアミノ酸です。
コラーゲンにも含まれていて、角質層の水分を保ちすぐれた保湿効果を示します。そのため、頭皮や髪のうるおいを保ち、髪にハリコシを与えます。
アスパラギン酸
非必須アミノ酸です。
コラーゲンにも含まれていて、角質層の水分を保ちすぐれた保湿効果を示します。そのため、頭皮や髪のうるおいを保ち、髪にハリコシを与えます。また、細胞を活性化させてくれる働きがあるので、新陳代謝や育毛を促します。
プロリン
非必須アミノ酸です。
コラーゲンにも含まれていて、角質層の水分を保ちすぐれた保湿効果を示します。そのため、頭皮や髪のうるおいを保ち、髪にハリコシを与えます。たとえコラーゲンが壊されても修復する力や、皮膚細胞を結合する働きがあるので、弱った頭皮のアンチエイジング効果を高めます。
また、髪内部の繊維質を強くする働きがあるので、髪を太くし髪密度アップを促します。
グリシン
非必須アミノ酸です。
抗酸化作用や血管を拡張して血流を良くする働きがあるので、頭皮の老化を抑制して若々しい頭皮をつくる働きがあります。そのためグリシンは育毛を促し、髪にもハリコシを与えてくれます。
また、皮膚のコラーゲンの約30%はグリシンでできていることから、頭皮の弾力や潤いを保ち頭皮環境の改善を促します。
バリン
必須アミノ酸で、筋肉を作る元となる(BCAA※)の一つ。
成長に大きく関わり、血液中の窒素の濃度を調整する働きがあります。
アラニン
非必須アミノ酸で、角質層にある天然保湿因子NMFの成分の一つでもあります。
角質層のバリア機能や保湿力を高め、皮膚更新作用を促す働きがあります。また、肝機能の改善効果や下痢によって失われた水分補給、脂肪燃焼効果もあります。
フェニルアラニン
必須アミノ酸。フェニルアラニンからチロシンを作ります。
保湿に役立つだけでなく、黒いメラニン色素の材料になります。
イソロイシン
必須アミノ酸で、筋肉を作る元となる(BCAA※)の一つ。
ヘモグロビンを形成するのに必要で、血管を拡張させ成長を促す働きがあります。
チロシン
フェニルアラニンからつくられる非必須アミノ酸。
黒いメラニン色素の材料になります。チロシンが不足すると、色素細胞がメラニンを作り出す事ができずに白髪になってしまいます。つまり、チロシンやフェニルアラニンを補うことでメラニン色素を増やし、白髪の発生を抑えてくれます。
リジン
必須アミノ酸。
コラーゲンの生成や、毛母細胞の修復・毛髪強化など成長に関わる働きがあります。
また、抜け毛に有効であるという研究結果や、「ミノキシジル、フィナステリドとリジン併用することでAGA(男性型脱毛症)の治療効果が高まる」という特許(アメリカ)もあります。
ヒスチジン
必須アミノ酸。ヘモグロビンの中に含まれるので、不足すると貧血になります。天然保湿因子NMFの成分の一つで、保湿作用や新陳代謝を促進する働きがあります。
髪のダメージを抑えてまとまりをよくし、髪を強くする働きがあります。
メチオニン
必須アミノ酸。メチオニンを摂取すると、ビタミンB6の働きによって体内でシスチンが作られます。
シスチンは髪の主成分であるケラチン(タンパク質)の中でもとても重要で、シスチンの量で髪の強度や髪密度を左右するほどです。そのため、シスチンが不足すると髪が弱くなり、薄毛・抜け毛になりやすいといわれています。また、髪の発毛を促す働きもあります。
トリプトファン
必須アミノ酸。体内でナイアシンになったり、脳内では脳内神経伝達物質「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の材料になります。
抗酸化作用や成長作用に関わりがあります。
※BCAAとは、体内で作ることができない必須アミノ酸である、分岐鎖アミノ酸(イソロイシン・ロイシン・バリン)の事です。
なるほど、アミノ酸の働きを見ただけでも、髪を健康にして弾力とハリツヤを与えてくれそうですね。アミノ酸が欠けたら髪が傷むのもうなずけます。
下の図は毛髪の断面図になりますが、この髪を作っているのがケラチンというタンパク質であり、アミノ酸群なのです。

洗浄成分である界面活性剤もアミノ酸系が注目されているように、健やかな髪へ導く近道にアミノ酸が大事だといえますね。
肌の潤いもアミノ酸から

また、地肌にもアミノ酸は必要です。上の図は、肌の断面図です。
角質細胞内にある天然保湿因子(NMF)は、水分をキュッと集めるかのように、水分の中心に位置しています。この天然保湿因子は、40%がグルタミン酸などのアミノ酸で、他にピロリドンカルボン酸(19%)、乳酸Na(12%)、尿素(7%)、ミネラルなどの成分が組み合わさっています。
天然保湿因子は、フィラグリンというタンパク質が肌のターンオーバーによってアミノ酸レベルまで分解されて作られることがわかっています。

フィラグリンの元は、角質層の下にある顆粒層に蓄えられているプロフィラグリンというタンパク質です。フィラグリンが10〜12個集まったものがプロフィラグリン。代謝によってどんどん分解され、アミノ酸レベルまで分解されることで天然保湿因子(NMF)になるのです。
また、肌の内部にアミノ酸(NMF)が少なくなれば、水分を保てなくなり保湿機能が低下します。
そのため、肌がカサカサと乾燥したり、ゴワゴワした硬い肌になったり、ひび割れを起こしてしまうなど、肌トラブルを起こしやすくなるのです。
アミノ酸をシャンプーに配合する役割
シャンプーは洗い流すものなので、アミノ酸は直接地肌に浸透するものではありません。でも、肌や髪の成分に近いアミノ酸は刺激などの負担もなく、やさしい成分といえます。
また、天然保湿因子(NMF)であるアミノ酸類をバランスよくシャンプーに配合することで、髪を保護することができるのです。
加齢やヘアカラーやパーマなどによってボロボロになったキューティクルには、アミノ酸の栄養補給が大事です。頭皮や髪を守るためにも、「アミノ酸」はたっぷり配合しているシャンプーを選びたいものですね。
