
ダメージヘアにおすすめシャンプーに配合されて話題になっている「PPT」ですが、いったいPPTってなんのことなんでしょう?
PPTとは、天然由来のタンパク質を加水分解して作られる成分(Polypeptide・ポリペプチド)のことです。英文字のPoly Pep Tideから「P」「P」「T」を取って名付けられています。
タンパク質はアミノ酸がいくつも連なっていますが、それらを分解してアミノ酸の連なりを短くしたものがポリペプチドです。
ここでは、PPTについて、詳しく迫ってみましょう。
アミノ酸・ポリペプチド・タンパク質の違い

冒頭から、アミノ酸やタンパク質・ポリペプチドなど、カタカナが連発していますが、それぞれいったいどんなものなのか、わかりやすく比較してみました。
アミノ酸 | アミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)をもつ化合物 | タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類 |
ポリペプチド | 2~49ものアミノ酸がペプチド結合したもの | アミノ酸が49以下で連なっている |
タンパク質 | 20 種類の L-アミノ酸がペプチド結合してできた化合物 | アミノ酸が50以上連なっている |
もうちょっと細かく見ていきましょうね。
アミノ酸とは

アミノ酸とは、アミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)の両方の基をもつ、炭素を含む有機化合物の総称です。
肌や髪などのタンパク質を構成しているアミノ酸は、「α-アミノ酸」のことです。α-アミノ酸はRCH(NH2)COOH という構造を持っています。カルボキシル基(-COOH)が結合している炭素(C)に、アミノ基(-NH2)も結合しているアミノ酸です。
私たちの体や髪に必要なα-アミノ酸は、20種類です。
豆知識としてですが、アミノ酸と称されるものには「α-アミノ酸」だけでなく「α(アルファ)」の部分が「β(ベータ)」「γ(ガンマ)」「δ(デルタ)」「ε(イプシロン)」などに変わるものがあります。これらは自然界に存在するアミノ酸で、500種類ほど存在するそうです。
ポリペプチド(PPT)とは
ポリペプチドとは、やや多くのアミノ酸がペプチド結合(-CO-NH-)した化合物の総称です。アミノ酸が10個以下で結合しているものは、オリゴペプチドとも呼びます。
タンパク質も多くのアミノ酸が結合したものですが、ポリペプチドはタンパク質より少ない分子(アミノ酸が49個以下の短い構造)のものを指します。
自然界のなかには短い構造のタンパク質が多くあるので、「タンパク質=ポリペプチド」は同じ意味で捉えることもあります。
タンパク質とは
タンパク質とは、20種類のアミノ酸がさまざまにペプチド結合した化合物の総称です。20種類のうち、11種類は体内で合成されます。しかし、9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、食事として体の外から摂り入れなければいけません。
タンパク質は生命維持にとても大切な成分です。
人間の体はタンパク質からできており、皮膚や髪だけでなく臓器・筋肉・血液などの元になります。また、エネルギー源となったり、ホルモン・酵素・免疫物質を作り出したり、栄養素を全身に送る働きがあります。
ポリペプチドはアミノ酸が49個以下の短い構造ですが、タンパク質は50以上の長い構造になっているものとして分けられます。
体を作り出す20種類のアミノ酸
アミノ酸(11種類) | 必須アミノ酸(9種類) |
アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン | ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン |
PPT系の効果は?

ポリペプチド(PPT)とは、皮膚や髪の主成分であるタンパク質と似たような構造を持っているんですね。それなら、頭皮や髪にとても親しみやすくて、やさしい成分といえます。
PPTの効果として、下記のようなことが期待されます。
- 低刺激で安全性が高い
- ダメージヘアの保護や補修
- 頭皮や髪への保湿性
- 髪への柔軟性
- ハリ・コシ・ツヤを与える
- ヘアカラーの色持ち向上
- パーマやブローのキープ力向上
- 界面活性剤としてマイルドな洗浄・脱脂力
さすが、ポリペプチドです!!!
PPTのデメリットはありますが、原料が高価だということですかねぇ。
ま、高価ではありますが効果が高いので、PPT系はシャンプーだけでなくコンディショナー・トリートメント・ヘアカラー剤・パーマ剤などにも配合されています。
なぜタンパク質でなくPPTが配合されているの?
では、なぜシャンプーにタンパク質でなく、ポリペプチド(PPT)が配合されているのでしょうか?
アミノ酸の結合体であれば、タンパク質を配合すれば十分ではないかという疑問が生まれますよね。
もう一度、この2つを比べてみましょう。
- タンパク質は、50個以上のアミノ酸が結合したもの
- ポリペプチドは、49個以下のアミノ酸が結合したもの
数字上では49以下か50以上かということになりますが、ポリペプチドはタンパク質よりも小さな分子となります。
タンパク質は髪の主成分にはなりますが、髪自体は「死んだ細胞」です。つまり、髪には自己補修機能はありません。
そのため、シャンプーやコンディショナーなどから髪を補修する成分を取り込み、髪に吸着して傷口に蓋をするしかないんです。だから、タンパク質が必要になります。
でも、タンパク質は分子サイズが大きすぎるので、シャンプーなどに入れることができません。
そのため、小さなタンパク質分子である、PPTが配合されているのです。
PPTの種類
シャンプー成分として配合されるPPT系ですが、それぞれ原料が違った種類があります。代表的なものがコラーゲン系・シルク系・ケラチン系です。
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
コラーゲン系

豚や魚に含まれるコラーゲンから抽出して得られます。アミノ酸の構成成分のうち、3分の1がグリシンからなります。他には、ヒドロキシプロリン・ヒドロキシリシン・セリンなど、水と相性がいいアミノ酸を多く含んでおり、すぐれた保湿・保護効果があります。
シャンプーに配合すると、頭皮や髪の表面に保護膜を作り保湿効果が高まります。
水性保湿剤 | 加水分解コラーゲン |
陰イオン(アニオン)界面活性剤 | ココイル加水分解コラーゲンK、ココイル加水分解コラーゲンNa、ココイル加水分解コラーゲンTEA |
シリコーン | ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ) |
シルク系

絹糸から抽出して得られ、繊維タンパク質:フィブロインと、セリシンで構成されています。水に溶けるポリペプチドを含みます。
シャンプーに配合すると保湿効果や皮膜形成効果によって、髪にツヤを与えてサラサラにする効果が高まります。
水性保湿剤 | 加水分解シルク |
陰イオン(アニオン)界面活性剤 | ラウロイル加水分解シルクNa |
シリコーン | (ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク、(加水分解シルク/PG-プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー |
ケラチン系

羊毛の中に含まれる、ケラチンタンパク質を加水分解して得られます。アミノ酸の構成成分として、硫黄(イオウ)を含むシスチンの割合が多く、グルタミン酸・セリンなどが含まれます。
ケラチンは髪の約90%を占める主要成分のタンパク質なので、コラーゲン系よりも髪の毛に吸着して馴染みやすくなっています。
そのため、シャンプーに配合することで髪を元気にし、ハリ・コシを与える効果が高まります。また、ケラチンPPTを配合することで、他のPPTの結びつきを強くします。
水性保湿剤 | 加水分解ケラチン |
陽イオン(カチオン)界面活性剤 | ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ケラチン |
その他
他にもPPT系はあります。それぞれの原料や効果については、下記の通りです。
パールPPT | 加水分解コンキオリン | 原料:アコヤ貝の真珠や貝殻 効果:髪にツヤを与える |
ミルクPPT | 加水分解カゼイン(牛乳) 加水分解乳タンパク |
原料:牛乳 効果:保湿 |
ダイズPPT | 加水分解ダイズタンパク | 原料:大豆 効果:保湿・皮膚細胞の活性 |
コムギPPT | 加水分解コムギタンパク | 原料:小麦 効果:保湿・育毛促進 |
卵白PPT | 加水分解卵白 | 原料:ニワトリの卵白 効果:保湿・柔軟・保護膜を作る |
まとめ
タンパク質を加水分解して作られる成分(PPT:ポリペプチド)は、原料となるタンパク質によってそれぞれ効果は違ってきます。
主なPPT系は以下の種類です。
コラーゲン系 | 頭皮や髪の表面に保護膜を作り保湿効果が高まり |
シルク系 | 髪にツヤを与えてサラサラにする |
ケラチン系 | コラーゲン系よりも髪の毛に吸着して馴染みやすく、ハリコシ感UP |
その他 | パール系・ミルク系・ ダイズ系・コムギ系・卵白系 |
PPTの効果について、おさらいしてみましょう。
- 低刺激で安全性が高い
- ダメージヘアの保護や補修
- 頭皮や髪への保湿性
- 髪への柔軟性
- ハリ・コシ・ツヤを与える
- ヘアカラーの色持ち向上
- パーマやブローのキープ力向上
- 界面活性剤としてマイルドな洗浄・脱脂力
あなたの髪の悩みを解消してくれるPPTはいろいろあります。自分の髪にあったPPTを選んで、自分の望む髪に近づいていきましょうね!
